でもそれが乗り物であることはすぐ分かった/天野茂典
 
天辺まで押し戻すのだ
  そうして一気に下るのだ
  10km 30km 50km
  空気が流れていった
  空気が分かれていった

  のちに芥川龍之介の『トロッコ』を読むことになるが
  この子供の頃のトロッコ遊びがとても役に立った

  トロッコ遊びはスリルがあった
  手に汗握る疾走だった
  遊園地では味わえない
  大人たちの飯場の遊びだった

  今でもあのトロッコはぼくの頭の
  海のヘリを疾走している



                 2005・02・12




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