夕暮れる夜/竹森
軸が北でも中天でもない夜を指し示し続けているのだとして。温かくも冷たくもないカフェオレに牛乳を継ぎ足し続ける人達の影が誰に気づかれる事も無く薄まっていくのだとして。私がこれからも沢山のゆで卵を夜な夜な泡立つ熱湯の中に産み落とし続けていくのだとして。)
「母さん、さっき幽霊が出たの。廊下の床が今まで聞いた事の無い不気味さで軋む音が聞こえたの。きっと青色の幽霊に違いないわ!」「恐いね。でも大丈夫。今夜はずっとここに居てあげるから、安心して眠りなさい・・・」「うん・・・あっ、また!」(まるで、調律の狂ったヴァイオリンね)(病床のこの子は兄の唐突な帰省を知らない)(あなたの兄さんは駄目になってしまったの、なんて言える訳が無いわ)(何?あの子、こんな夜更けに、洗濯物を干している?)(あら、急に風が湿っぽくなった?それに、この檸檬の香り―――)
私が知覚するのは1秒1分1時間では無くて朝昼夕夜という時間帯なので、
私の視界は、絶えず点滅していきます。
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