夕暮れる夜/竹森
(質問に答えて
(それよりも先に
(消えたいと
(呟いて
そういえばあれはいつの夜だったか、もしかすると昨日の夜だったのかもしれない。人差し指に女の長髪を絡めていた時に、背中に感じていた掌の体温。
「どうかな?」女は俺の為に茶髪を黒色に染め直したのだと言った。しかし、くたびれた黒髪は俺の望むものではなかった。俺はただ俺の顔色を伺う女の、照明を受けて宝石の様に煌めく濡れた瞳に魅せられていた。「雨は窓にぶつかればその流れる速度が遅くなる。この部屋では外よりも時間が穏やかに流れているっていう証拠だね」と、いたずらに成功した少女の様な微笑を浮かべた女のその一言を合図にして、俺
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)