無題/渡辺亘
 
私が死ぬ時
はじめて言葉は息を吹きかえすだろう
私が言葉に命を捧げる時
はじめて言葉はよみがえるだろう
私の身体が消滅する時
はじめて言葉は受肉するだろう
書けないなら
書けないと書かねばならない
書けるなら
君の胸に
光源が点るまで
叫び続けねばならない
言葉に命を捧げる覚悟ができるのなら
生活は充実してくる
それと同時に陰もできる
陰影は濃く深く
絶望が深い故に
希望は輝く
新しい言葉は
新しい生活
新しい人生
言葉を生きることは
生命を生きること
言葉を生きることは
生命を生きること
希望という言葉は
なんて輝く光源だろう
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