独白/dopp
僕にとって今最も重要なイメージは、暗い星空の中を真っ直ぐにふわりと落ちてゆく灰白のクジラの死骸です。胸鰭は空気に押されて持ち上がり、細かな屑をその身から剥離させながら、そうしてそれらの屑よりほんの少し速く、モノクロのクジラが沈んでゆきます。白く澄んで月に至る階段のすぐ傍を撫でるように、巨大なクジラが白く濁った目をして通り過ぎます。僕はこのクジラを数年前にも目にしましたが、それは階段の上ではなく、その根をうねらせて先へと進む街路樹の群れに足を取られて地下へと引き込まれてからも歩き続けた所で、廃墟と化したショッピングモールが水底に沈んでいるのに気づいた所に、柔らかな粘土でそれらの建造物が構成されていた
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