狂咲/竹森
天井、いや、でも、それは、しかし。私もう堪らなく辛くて、ついに恋人の名前を読み上げれば、ぬくもりとなった恋人が私の掌からするりと抜け出して、私を見つけてくれて、でもそれは私の影で。切り離された私の影と一緒にあっちに行ってしまって。私、どうすればいいのかわからなくなって、目を閉じる事さえできなくて。ああ。あの人。煙草。なんて吸っていたんだ。ねえ、いつだって、ビルとビルの通り抜けられない隙間を覗いた時に限って、その向こうにはきらめく苺畑が一面に広がっていたんだよ。私の身体、ふわりと浮いて。宇宙で弾けた。
戻る 編 削 Point(2)