徒歩/dopp
 
めっちゃ歩いていた。東京まで30?だった。帰船時刻までに帰れる可能性は皆無だった。自分が間違いなくあらゆる点で自分らしいということに得心がいっていた。野良猫の匂いのする文章が書けると思った。詩になると確信していた。消火栓のマンホールが黄色かったし、鉄塔には飛行機が重なっていた。問題はどこで右折するかということだった。歩きながらうにゃおおと唸っていた。我ながら猫だった。完璧な一発芸だったし、さっきすれ違ったおじいさんには、突然「背があっていいねえ!俳優さんじゃないの?俳優になるといいよ!」と言われていた。ありがとうございますとにこやかに答えながら速度を緩めずに歩き去ったから、オーディションで猫の鳴き
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