いつかわすれたうたが/石瀬琳々
 
いつかわすれたうたが
君のくちびるにのぼったら
一艘の舟がこぎだすだろう
夕陽の海へ 雲のかなたへ


 (そして、振り返ることもなく)


いつかわすれたうたが
君のなみだにかわったら
一羽の鳥がとびたつだろう
夕陽の海へ 白い羽根をこぼして


 (ひとひら、まぶしく落ちていった)


戻っておいで わたしのこころよ
波濤はひかりを増してゆく
それだけが痛みのように
戻っておいで かつて愛したものよ
目を閉じると
夕陽の海ははるかな君へとつづいている


 (もえているのは あれは赤い花、
  血のような赤い花、)


いつかとばなくなった鳥が
君のつばさにかわったら
いつかわすれたうたを
君はうたって



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