流転/MOJO
添乗員として働いてみて、この仕事が自分に向いていない事はすぐに判った。仕事自体は難しいものではないが、添乗員とはある種のタレントのようなもので、人間的に、もっと言えばルックス的に『華』というものがないと、客から良い印象は得られにくい。損害保険で売れなかった私は、その華がない。
これは、よほどの覚悟を持ってやらなければ、干されるぞ。私はそう思った。
私は客の下僕となる誓いをたてた。この業界で私が生き残るには、それしかない、と思った。しかし、そう決めてしまえば、それはそれほど苦しい事ではなかった。どんなに嫌な客とも、二週間もすれば、成田空港の到着ロビーでお別れである。よほどの事がない限り
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