緑/梼瀬チカ
出勤途中
春の雨が降り始める
傘をさしながら
自転車でこぎ急ぐ
信号待ちの時ふと気付く
この雨が一日一日春を呼び
急に芽吹き出した緑の木の下
緑のカッパを着た老人が
信号待ちをしている
時差信号は一分程で緑に変わり
とり急ぎバイト先に着くと
四月からは公社に変わる郵便局の
配達員が慌ただしく
緑の制服姿で
朝の安全確認を点呼している
いつもの朝だ
今日は二十五日
いつもの郵便物に
公立高校の合格通知が束になって
鞄へ入れられ
彼らは配達にでる
やっぱり緑のカッパだ
春の湿った空気と
郵便物の混じり合う匂いの中
私は不在通知の電話を取り
雨に打たれる窓ガラスの外を見る
ふいに
手紙が書きたくなる
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