住宅街/あおい満月
 

寄り添って毛繕いをしている
猫の親子を視ている。



(時をとめる)
ふと、
愛について考えると
夏の海がみえてくる。
まだ腕には初々しい
瑪瑙の赤い瞳が
物珍しげに唇をみている。
帰りの車窓に射し込む西陽が、
夢を編みながら眠る人々の瞼に影をおとす。

**

(確信する)

私がここにいることと、
私がここにあることが
交差する中点に触れたい。
誰かが川の浅瀬に戯れるさかなのように
ゆるく指先を掠めていった。
時折吹いてくる風に
残された夏草が
揺れている小路に、
足跡がある。
その足跡の後れ毛をなぞっていくと
みたことのない、
過去という明日にたどりつく。
そこは、
いつかみた空っぽの住宅街。
人の匂いはあるけれど、
誰もいない。
窓辺から聴こえてくる
やかんの音だけが聴こえる。
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