消失の夏術/ただのみきや
木影に影を重ね 静かに見送る
蟻たちに運ばれて往く
ことば 肉から零れ落ち
熱い 取っ手を掴んだ
わたしは夏に生まれた
きっと夏に死ぬだろう
光の色彩が教えてくれる
深い昏睡のなかの
ひとつの気泡
ひとつの宇宙
不法投棄された魂の群れがくっきりと
はっきりと 幻を得る
世界の末端の
ひとつの黒い 端末が
誰かの手の中で震え
破 裂 し て
わたしは夏に生まれた
きっと夏に死ぬだろう
渦巻く草木が教えてくれる
《右だ もっと左 あと少し前
輝き
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