旧家/葉leaf
 
でも涼しく保護された場所で成長していく。それに対して私はこの旧家の建屋そのものだ。これまでの歴史を背負って、陽射しや豪雨をじかに浴びながら、朽ち果てるまで立ち続けなければいけないのだ。
姪は社会に出るまでの期間、責任を負うこと、自立することから守られている。社会の烈日を浴び過ぎていた私には、ただただその猶予された人生が欲しくてたまらなかった。だが、この欲望は永遠にかなわない欲望であり、私はこの旧家の建屋として後戻りすることはできない。
私は自らが欲望するものを保護することで、欲望を代理満足することしかできない。旧家の建屋として、夏の烈日から姪を保護することで、自らの欲望する姪の人生を保護する。姪が社会から猶予された期間に成長していくのを守ってやることで、あたかも保護された人生を自分に与えたような気持ちになる。旧家の建屋はその内側の涼しさも同時に生きるのである。

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