旧家/葉leaf
陽射しが強くこの地方を焼き、蝉の声が激しく響いている夏のある日、実家の旧家の建屋の中で姪の一歳の誕生日パーティを開いた。かつては無垢であった姪も、繊細な感情を抱くようになり、羞恥や恐怖や興味を外界に抱いている様が表情に表れていた。
私はその頃勤めていた会社と組織上の交渉を行っている最中であり、組織の鈍重な力と複雑な構造を前に手を焼いていた。そのような絶望的な日々に、姪の顔を見るのは癒しであり、これからの目覚ましい人格的発展に強い希望を抱いた。
私は、母親に縋る姪を眺めながら、急に、姪の人生が欲しくなった。姪はこれから庇護されたまま成長していく。この旧家の内側のように、こんな夏日でも
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