群青色におはよう/よるのまち
「とある作家が自殺した後、
その作家が住んでいた部屋から毎晩、酷い油の臭いがした。
隣人たちはそれを理由に、ついに家賃交渉で大幅な値下げに成功した日、私は産まれた。
私は自殺した作家の部屋の隅を住まいとし、朝が来れば蓑を被り、夜が来れば六畳を転げ回った。
雨の日は少しだけ落ち込んだ。
理由はどこにも書いていないのだけど。
自殺した作家は画家気取りの芸大生で、
毎晩自分の血液を油絵の具に練りこんでいた。
だから死因は失血死だったのだけれど、今となってはすべて過去だ。
私は毎晩、彼、もしくは彼女の油絵の具を自分の身体に取り込み、産んでいる。
なにを産んでいるのかは私
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