もしも世界にラジオだけだったら/まきしむ
ないストリート・ミュージシャンの頭にかかる
連絡通路の下を風に乗って走る木の葉や塵と混ざる
オフィスのトイレの開いた窓から入り込む
ティッシュ配りをする青年の長髪に絡まる
あやしい占い師の看板にひっかかる
水着を着たマネキンの後ろを通り過ぎる
待コンに行く女の子達の......
聴衆はいっせいに声にならない声をあげ、その声は重なり合って巨大な滝音となり、
ビルの間で反響し膨らんで拡張されるとたまたま通りかかった積乱雲の下のヘリコ
プターのマイクに拾われ、何千キロ先のアメリカの郊外で自家用車を洗車中の銀髪
の中年のラジオまで中継された
「世界はうらがえりました。カラスは
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