「白雪姫とベンジャミン」/ベンジャミン
 
白雪姫を愛する心はありません。しかし、幸せを祈る気持ちはあったからです。
月のきれいな晩でした。
ベンジャミンは意を決して城へ向かいます。懐には銀のナイフそして同じ銀の盃が入っていました。
カーテンのはがれ落ちた部屋には、月の薄明かりが差し込んで、それが白雪姫をさらに白く浮き上がらせていました。
ベンジャミンはナイフを胸に当てると、ためらうことなく深く体に沈めました。
聞き取れないほどの声で、ベンジャミンは何かを呟いていましたが、それは零れ出した血を盃が受け止める音でかき消されました。もつれる足で白雪姫にすり寄ったベンジャミンは、盃をそっと唇に当て、おそるおそる注ぎました。薄紅
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