日常/ららばい
隣に寝ている祖母の髪をいじるのが
幼い私が眠りにつくための儀式だった
人差し指で祖母のぱさついた白髪交じりの髪を
くるくる巻き取る
眠る寸前までやっているものだから
翌朝の祖母の髪は縮れて
櫛を入れるのが大変だった
汗と線香と土のやわらかいにおい
無口で酒飲みな父は
時々思い出したように私を
近所のラーメン屋に連れて行った
早足の父に私はいつも置いてきぼりだった
父の後姿が小さくならないように
私は俯きながらせっせと歩いた
父は子どもという存在が苦手だったのだろう
ふと後ろを振り返る父のどこか困ったような目が
私を捉えずに宙を彷徨っていたのを覚えている
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