けむる、浄化/為平 澪
 
あり、姑にまでなろうとする女。そして今夜もおそらく河で頭を洗うであろう、鉛色の六角形鉛筆の芯の眼をした女。

私はいつまでたってもひとりで一つの向日葵を咲かせることが出来ない。ここが駄目、あそこが違う、雄弁な叱責は、伸ばそうとした足先をスコップで根こそぎ切り刻み、掘り返され、私は項垂れたまま枯れるしかなかった。
俯いた顔から黒い「かなしみ」を落としても、発芽することなく鋭利な母の息吹に凍て付き根絶やしにされた。干からび萎びた私は、晩夏の太陽に見世物にされ干されたまま腐ってゆく。

今夜、仕切り襖の溝に、流れる河へ飛び込もう。
明日は確か燃えるゴミの日。青いナイロン袋にくるまれた、白いティシュ、黄ばんだ指先三百六十五本×2と、金切り声や愚痴った後のヨダレたち、そして私のようなアタシ、流れ着きましたか、お母さん。


ナニか腐った臭いが立ち込める部屋で老女がジョクソウとタオルケットの間に忍ばせた枯れた向日葵とナイロン袋、それらを枕元に飾ると安心したように私の名を呼ぶ。
私は今夜も母の頭の中で、まき戻されては、綺麗に再生されてゆく。

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