中原昼夜逆転/あおば
 
               150716

中原が昼夜逆転したのは、19歳の時だった
作家を目指して古今東西の文学を漁り
夕刻、人気の無い干潟を散策しては遠くを眺め過ぎ
足元の柔らかい深みに嵌ったまま、潮が満ちてきて
あわや溺死というところを
海苔ひびの見回りにやってきた地元漁師に
助け出されたのだ
その時、無理に引っ張られ、左足首を痛め
今でも歩く時には少しぎこちない感覚が有って
飛んだり跳ねたりとは無縁となってしまった
それ以来、創作は難しいが評論ならば
地道に研鑽を積めばそれなりに糧が得られる
のではないかとの囁きが彼を唆し
2年遅れで文学部に入学した

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