書く動力 5/Dr.Jaco
 
ること
が自覚されると、肉体への堆積が重くなってくる。体の外に放出できない「言葉さん」
が堆積する。で、時折キレたような文字を置いてみて、すっきりした振りをするのが
せいぜいなのだ。

愛と憎しみの円環は、その90%が憎しみであり、たまに近日点に来た「言葉さん」
の幻影が錯覚される時だけが愛である。その愛の時間が重くて、フラフープのような
遠心運動が続く。それがスパイラルのごとく突き進むものなのか、やがて失速して足
下で息絶えるのかが少し気になる。

ただ間違いなく、繰り返しがなかったら、私は書いてはいないのだ。そして文字を置
く行為は、意図するとしないとに関わらず、読む(ないし読まない)貴方の像を結ば
せる。実際にいようがいまいが、文字が「貴方」の像を投影し、私の肉体の中に倒立
させるのだ。だから一方で、私は「貴方」の中に倒立したくて、文字を置くのだ。

セックスよりは難しいアクロバットが要求されていた。
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