三つの部屋/竹森
(一)
ようやく嵐が過ぎ去って、僕たちは家に帰ることができた。テレビではクマの出産のドキュメンタリー番組がやっている。「狂ってるわ」と君が唇を尖らせて、「狂ってなんかいないさ」と僕が唇を口内に押し込める様に微笑めば、この部屋の四本の柱や一枚の天井みたく、引きつっている。落雷でなぎ倒された木の幹が僕らのドアを塞ぐわけでもないのに、ドアの向こうの大気が深夜になるとダイヤモンドになってしまうわけでもないのに、僕らはこの部屋に閉じ込められている。これはどういうわけだろう。また僕らは冷蔵庫を意味もなく何度も開けては閉めてを繰り返してうんざりしている。これはどういうわけだろう。君が言う、「人生を貶めてい
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