一説/もり
 
亀は心配だった
兎が寝ていなかったら
どうしよう。

雨が、降ってきたから。

草を噛みながら進んだ。
これは、もうダメだな・・。

悲しみに濡れるくらいなら、
甲羅にこもってしまおう。
そうして
蝸牛にさえ、追い越された。

どれくらい経ったか、
山頂から足音が聞こえた。
ぴょんぴょこ、ぴょんぴょん。
にょきっ
久々に顔をのぞかせた亀の前に
兎がずぶ濡れで駆けてきた。

「雨天中止だってヨォ!まったく。
ほら風邪引いちまうぞ、
帰ろーぜ!」

ぴょんぴょこ、ぴょんぴょん
甲羅の傘で。

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