普通の愛/もり
SOSの言葉はもはや、何の意味もなさない。誰も最初から、君を助けてはくれないのだ。僕は何かを奪われそうになったら、その銃口を向け、引鉄をひくしかないのだろう。
僕は何度もSOSを発信した。
そして、拳を握りたかった。
でも小さな名もない花を、
僕以上にか弱い愛を、僕は殺すことを躊躇ったんだ。
東京の朝はいつも通りだった。
僕という、根無し草は、とうとうこの深い森で見えなくなる。
ハイヒールの音が、まるで僕の脳を突っつく啄木鳥のようだ。電車内は朝から腐臭がする。
誰もが座りたい・・座りたい。
そして出来れば目覚めたくない。
現場へつく。
僕ら交通費も出ない労働者たちは、
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