境界域/たけし
 
薄暗い部屋の奥に、
くすんだ肌色の布が掛けられた祭壇が設置され
(段の上には、
大小無数の古びた細長い金属製の小物類が重ね置かれている)
そのすぐ向こうの仕切り障子窓は、
両端がわずかにあけられたまま
濃い闇に向け開かれている
(闇は仄かに底光りし、
私の眼は否応なく惹き付けられ
その中に入っていきたい衝動に駆られる)

部屋の手前右端、
17インチのブラウン管テレビの死んだ画面から
筍のように突き出ている一塊の艶やかな白い骨
異様な気に包まれ踵を返そうとして私は観る、
部屋の両奥端が
コバルトブルーに楕円の光りを放っているのを

私はやっと気付く、
自分は今
なにか巨大なイキモノの上に乗って
危うくも確かに存在しているのだと。

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