変身したい/智鶴
 
嘘ばかりで安っぽいお伽噺じゃないのにね
雨音が小舟を脅かす夜に
嵐の中、揺れる吐息
生きている
自分も世界も欺いて
生きている?

誰かがドアを叩いている
此処が何処だか分からない魂だろうか
眠りそびれた少女の命だろうか
それとも
僕に気付いてほしい嘘だろうか

僕は僕じゃなくなりたいのに
私は僕じゃなくなりたいのに
こんな嵐の夜には
蝋燭が消えるまでに
世界も変えられるかも知れない
のに
一秒先の運命も分からない

浅はかな体がまた夜を妨げ始める
それが全ての始まりの合図
歪めば歪むほど美しい
嘘みたいな裏側の歌声が
嘘の世界に火を付ける


[次のページ]
戻る   Point(4)