包み込む手のひらから/深水遊脚
 
つるりと逃げ出す言葉は
重心を同じところに留めようとする
こちらの思惑を知っていて
その裏をかくイタズラを仕掛ける
追いかけるとき進む道は
こちらが選んでいるようで
あちらの作戦通りのポイントに誘いこまれる
逃げ出すとき振り向いて
ずいぶん遠く離れたつもりだったのに
走り疲れて休んでいる隣に
ふと現れたりする
私をよく知っていて
私を軽くからかったりはするけれど
私が本気で怒ること
許せないと感じるポイントは
なんとなく知っているようで
それをまともに訴えれば
決まってつまらなそうな顔をする
あるいは悲しいのかもしれない
そんなこと今更知らない訳はないでしょう
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