水辺 越音/木立 悟
緑の通りは影にあふれ
小さな原には誰もいない
橋の上には足音の波
波を押し出す風ばかり
空から橋
橋から原
幾つかの歪みが立つ境いめに
音は残り またたいている
通りから通りへ
影たちが去ると
真昼の前の
一度だけの
静けさが来る
地図に降る雨
乾く速さで
すぎてゆく声
同じかたちの
舟のはざま
雪のような生きものが
小さな原に現われては消える
入江の光が
橋脚をのぼる
冷えたものがあたたまり
原と径の手のひらをすぎ
音は止み 音はつづき
地図は
橋より高く飛び去ってゆく
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