Choral/草野春心
 


  天使は窓の縁に座り
  少しずつ透き通り 外の闇と
  見分けがつかなくなってしまった……
  バッハの遺した鮮やかなコラールが
  床の木目に 僅かな痕をのこした後(のち)
  私たちはおずおずと話を始める
  野犬がみている
  裁ち鋏がみている
  湿り気をおびた風がみている
  天使の形にきりぬかれた
  闇のするどさが 私たちをみている


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