自称詩人の首吊り/花形新次
 
自称詩人が首を吊って死んだ
アパートの隣人が
異臭に気付き
管理人が部屋に入って
ぶら下がっている自称詩人を見つけた

足元には遺書とみられる
便箋が置いてあったが
意味不明なので
管理人が鼻かみに使った
管理人が鼻をかむ前に
チラッと読んだ内容は
こんなものだ

「悲しみの七月」

小鳥が巣立つときは
雨は止んでいて欲しい

止まないなら
私がずっと
傘を差してあげる

真っ赤な傘を

小鳥に
傘のことを
思い出して欲しいから

思いきり目立つ
真っ赤な傘を
差してあげる
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