ちから/木立 悟
鳥の絵があり
扉をあけては飛び去ってゆく
はばたきに染まる水の底には
魚のかたちの記憶がいて
沈みくる声
沈みくる雪を聴いている
ふわりと動くちからがある
生まれたばかりの赤子がいる
雪でできた月のむこうに
光でできた月はあふれて
まぶたを流れる時間になる
くりかえす小さな波になる
ふわりと動くちからがある
空を向いた鏡がある
つらなる光の像を追い
手をのばす舟の軌跡がある
返らぬ応えと吐息がある
冬を片目に閉じこめて
旅立つ双子の猫がいる
ふわりと動くちからがある
ふわりと遠いちからがある
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