ちから/木立 悟
ふわりと動くちからがある
雪にちらばる削られた木がある
布か機械かわからぬ四角を
抱きしめて眠るけものがいる
ふくろうの後ろ姿をした人が
朝の光に手をふっている
ふわりと動くちからがある
冷たい波の手はめぐり
冬の雀の丸みに触れる
手首に息を吹きかけて
動かぬ時間を見つめるとき
応える小さなふるえがある
ふわりと動くちからがある
川に降りつづく雪がある
水面に映る橋の上の子
呼びかけるたびに雪になる声
声の行方を見つめる子がいる
見えなくなっても見つめる子がいる
ふわりと動くちからがある
降りてくるたくさんの鳥の
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