かもしか、君が好きだよ。/チアーヌ
 
わたしの知っているかもしかは緑色だ。松脂がびっしりと体について光っている。つやつやした毛並み、つぶらな瞳、五メートルほど前に立っていたかもしかは「誰?」と小首をかしげてみせた。

一歩前に出れば向こうは一歩下がる。もう一歩前に出ればもう一歩下がる。距離は縮まらないけれど不思議と嫌われている気はしない。なぜなら、かもしかはずっと笑っていたから。動物には笑顔が無いなんて言うけど本当かなあ。だってちゃんと笑っていたよ。

考えた。どうしたらいいかなって。一番簡単そうなのは投げ輪。首にひょいとかかったらあとは引っ張るだけ。できれば太い木の枝にひっかけ、体重をかけ一気に輪を引き絞るのがいいだろう。次
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