和解/吉岡ペペロ
試合にはわき目もふらず枇杷を摘んでいった。枇杷の木が色を濃くした葉だけになってしまった。
ぼくらは葡萄を食べるような感覚で夢中になって枇杷を喰らった。ほんのり柑橘系のやわらかい香りがテラスに漂った。皮はコンクリートのうえに無造作に棄てた。ぼくらの指や鼻や口のまわりは汁けでぐしゅぐしゅになっていた。
食べ尽くした頃には新入りの猫背の男の経歴やらぼくらの経歴は、すっかり交換されていた。
まえの女の子がついにレジに辿り着きつぎはぼくの番だった。みっつのレジのうちどこが空いてもすぐに行けるように、ぼくは相手のサーブを待つテニスプレイヤーのように小刻みに重心移動をしていた。
ぼくの番が来た。「あ
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