『年中行事』 卵から始まるはな詩?/ただのみきや
――卵がない!
よりによって
妻が亡くなってから
最初の息子の誕生日
わたしは初めてオムライスを作った
息子の大好物
記憶の中の見よう見まねで
決していい出来ではなかったが
息子は気に入ってくれた
以来それが誕生日の決まり事となった
卵を幾つも使って出来上がった大きな黄色
赤いケチャップで齢の数字を描く
ささやかで輝かしい親子の絆の証
なのに
卵がないなんて
奇妙なことに
スーパーでは卵が品切れだった
次の店も また次の店も
どこの店員もにこやかに
「卵は有りません」と言う
十一月にイースターでもあるまいし
段々と焦りが出てくる
心
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