地下鉄のなかで/吉岡ペペロ
 
った。老人の仕事にはぐれた背中を見てやりたくなった。
ドアが閉まろうとするころには何人かの乗客がホログラムにからだを重ねていた。
ぼくの横にも新しい乗客が座った。
一瞬の反動のあと電車が動き出した。
老人が笑って女性と話しているのが見えた。
ぼくはなぜだかそのふたりの存在に見つめられているような気がして恥ずかしくなった。
そしてまたひととホログラムを見つめながら善意と悪意について考えはじめていた。近未来のような過去を想った。虫の匂いが変わらなかった。








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