地下鉄のなかで/吉岡ペペロ
 
地下鉄は人工知能で操縦されていた。昔はひとが運転していたそうだ。信じられない話だ。
ぼくはマイケルジャクソンと田中将大に挟まれて座っていた。ふたりからか、ふたりのどちらからか、車両からか、虫の匂いがしていた。ぼくは近未来のような過去を見つめていた。
近未来のような過去とは比喩ではない。日進月歩でテクノロジーが進んでいる現代のような世界では、ちょっとした過去は近未来のようにも思えるのだから。
ぼくの両隣はホーキング博士とグレースケリーに変わっていた。治安維持のために座席には有名人のホログラムが映されていた。相手は自分のことを知らないが自分は相手を知っているというような場合、ひとはその相手のまえ
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