遠く/keigo
望むべくもなく
うつろう街並み
あの日風船を追いかけた
あの空は
今はきっと
ずっと狭くなった
初めて英語の授業を受けた日の
夕暮れの電車の
くすんだ白の車体は
とんとみなくなり
大人の入り口で
彼女と入ったジャズ喫茶は
ある日ガレキの山になっていた
駅のガード下の汚い店は
フランチャイズの
お洒落至上主義の犠牲になり
あの路地裏の砂利道は
黒ぐろとしたアスファルトに
取って代わられた
ねえ
僕らは本当にそれを望んでるというの?
思い出の置き場所は心に留めろと
そんな声さえも残響だけをのこして
遠ざかってゆく
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