アイン、ヨナ、リクト幻想/dopp
 
インの歩みが起こす風に流されるのでした。できるだけこれらの死骸を気にしないように、前だけを見て歩きました。あの中にはヨナもリクトもいるはずでした。仰向けになって目を閉じ、胸の上で手を組んだヨナです。右肘を逆に折られ、お腹から内蔵をはみ出させて砂に塗れたリクトです。二人とも薄く笑いながら、はらりと空気に解けた髪は淡く月の光を帯びているはずでした。たとえ目を閉じていたとしても、アインにはそれが分かるのでした。
宙に浮かぶ階段は蛇行しながら、空に張り付いた薄っぺらな月に繋がっていました。あの月には扉が付いている、とアインは思いました。
空は次第に紫色になりました。扉がはっきりと見えました。金の飾りで縁取りされた片開きの黒い扉が、不恰好に張り付いています。近づいてみれば、月は白く、目が痛くなるほど強い光を放っていました。
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