アイン、ヨナ、リクト幻想/dopp
 
アインは白い階段を上り続けていました。薄い灰色をした大きな鯨の死骸が、胸鰭を反らせながら身に纏った細かな塵を月明かりにキラキラとさせ、ゆっくりと水底に沈むように風も立てず落ちてゆきました。大きな優しい目を白く濁らせた鯨の死骸でした。見ていた訳ではありませんが、どこまでもどこまでも、点になるまで鯨が沈んで行くのを感じながらアインは歩きました。ふと上を見上げました。鹿、鳥、蛙、魚、猫、半ばで折れた樹、何もかもの死骸が大きな灰色の渦を巻いて降り続けているのが見えました。ぶつかりそうになりましたが、空気の詰まった紙袋よりもずっと軽く柔らかく、あまりにもゆっくり落ちるので、手の届くほどの距離まで来るとアイン
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