克己の朝/葉leaf
重たくてでこぼこだらけの
大きな石を呑み込んだ
トラウマは
呑み込んでしまえ
噛み砕いてしまえ
胃腸の中できれいに消化されて
跡形もなく消え去ればいい
確かに私は被害者で
大きなトラウマを負い
社会の濁流に飛び込む際
トラウマに足に絡み付かれ
社会の流れにしばし置いていかれた
だがしかし
社会の濁流のすみずみに
人間の価値は行き渡り
人間の生命が棲み付いていて
私はその濁流へと戻らなければ
人生が再びその滾りを取り戻せない
トラウマなど所詮私一人の所有物
社会でのめくるめく冒険を妨げる重石でしかない
私に夥しく衝突してくる他者の粒子
その粒子への応答を妨げる断線でしかない
もちろん
トラウマは私を守るもの
私を傷つけたものから私を遠ざけるためのもの
だがもはや
私に守るものなど何があろう?
トラウマなどに守られなくとも
我が身は自らの行動で守る
だから今朝私は
重たくてでこぼこだらけの
大きな石を呑み込む
戻る 編 削 Point(1)