雨/青井
いまぼくは雨の全体と対峙しているのか
それともぼくもまた雨の一部なのだろうか
深く息を吸うとにおいがする
油のような金気臭いような
大きな生き物の呼吸のような
鼻の奥がじんと痺れる気だるい雨のにおい
ものの数分で雨はあがった
じっとりと濡れたグラウンドに雲の影が走る
もう終わりにしてラーメンいこうぜと
お調子者が囃すように言った
吹く風は水を含んで
首元を生温かく撫でていく
あのにおいは遠のいたが
まだぼくは雨の中にいる
もしくは と思いなす
ぼくの中に雨がいる
薄日がポプラの葉を染める
誰かがボールを取り落として地面に転がった
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