雨/青井
 
雨が降り始めた
はじめは静かな
そして次第に大げさな音をたてて
雨粒が校庭の砂地へ染み込んでいく
監督がいったん切り上げろと
ベンチ屋根の下で叫んで
みんなで部室棟の張り出した庇の下に駆け込んだ
すぐ止むだろと主将が呟いて壁にもたれた
後輩がライン引きを足元に立てる
引いたばかりの白線が
グラウンドの砂に滲んでいくのが遠目に分かる
前髪から水滴が落ちる

雨はどこから雨と呼ぶのだろう
雨粒というからには
この一滴一滴が雨なのだろうか
雨雲というからには
あの空に広がる灰色もやはり雨なのだろうか
雨音というからには
この音の一つ一つもやはり雨なのだろうか
いま
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