藁を掴む/青井
 
このところの長雨で
情報がふたたび洪水を起こし
人の街を飲み込んだ
だれもが溺れまいとして藁を掴むので
藁売りたちはひどく忙しい
原料の藁が中国でも高騰している上に
アジア経済の勃興で人件費も膨らむ一方なので
藁売り業界はなにしろ火の車だ
そんな中で時代の寵児と言われる
かの藁売りが目をつけたのはアフリカ中部の奥地だった
今ではすっかり珍しくなった藁の原生林と
真面目で我慢強い原住民たちが藁売りにとって
最後で最高のフロンティアであることを
その藁売りは早くから見抜いていたのだ
まあなにしろ苦労の種には事欠きませんでしたよと
藁売りはテレビカメラに向かってにこやかに語
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