疋田龍乃介詩集『歯車VS丙午』について/葉leaf
 
次から次へと対抗する暴力が定立されていき、社会の網の目は相互に対立し牽制し合う暴力で満ち溢れている。
 だとしたら、詩の暴力もまた社会のネットワークの中で、何らかの暴力と対抗する形で成立し、一方で詩にはまた別の暴力が反措定されていくはずである。私の見立てでは、まず世の中の支配的言説というものがある。それは社会の多くの成員の同意や共感を得たもので、多くの成員を支配し、定常的で固定的である。世の中の支配的言説は、権力を持ち、多くの人間を支配すると同時に、そこからの逸脱を許さない。そして、詩は、この支配的言説の暴力的支配に対抗する暴力だと私は考える。
 詩は、勝者の語る言説に対抗する敗者の言説であり
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