愛歌・序章《夏》 きみは もうすぐ二十歳(はたち)/南無一
 

こうして ふたりして
笑っている ときでさえ
ふと
悲しい想いに なることがある
ぼくの 前から
きみが 突然 見えなくなって
しまいそうな
そんな 気がして

遠い海の うねりは
もう 
夏の色が 滲み込んでいる
生まれたての
紫陽花の 花びらが 雨に
しっとりと 濡れはじめるころ
ぼくは もうすぐ 二十三

蒼すぎる 空が まぶしくって
ぼくの 瞳は 戸惑って しまい
きみの あどけない 仕草に
ぼくの 心は 戸惑って しまう

若葉を とおり過ぎてくる
風には
もう 
夏の 匂いが している
きみの おでこの にきびが
夏の 光りに こんがりと
焼けるころ
きみは もうすぐ二十歳


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