五月の夜/
塔野夏子
青い闇の底
鍵盤が滴る
それらを奏でる指たちは
烏座の方角からやってくる
遠くにたたずむほの白い光圏の
愁いと呼応するカーテンの揺らめき
漂う柑橘の花の香が
ふとひとのかたちをとり
またほどけた
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