女子高生と人魚/愛心
 


控えめな美しい字で ルーズリーフに綴った

声が出ないことは悲しくない
声が出ないことは当たり前だから

でも

この当たり前を 誰も認めてくれない

耳が聞こえるのに話せないのは 異様に映るみたい

でも良いの

私はこれが私だから

その瞬間だったと思う

笑みをたたえ 静かに目を伏せた彼女に
私は恋をした

それからの私は 自分でも気持ち悪いくらい彼女の傍にいた

友達になりたい なんて嘘をついて
彼女のことを知ろうとした

彼女の綴る言葉を 噛み締めるように毎日読んだ

絵本になっているような 昔ばなしが好きなことを知った
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(4)