女子高生と人魚/愛心
 

「ねぇ なんで喋れないの?」

染めたこともないのだろう
黒髪に浮かぶ 天使の輪が揺れて
不思議そうに彼女が私を見た

ほんの気紛れだった

クラスメイトの誰とも関わらず
自分の席で分厚い小説ばかり読んでいるいつでも一人の彼女と
たまたま日直になって 二人きりのクラスで 日誌を記録するシャーペンの音ばかり響くから

その気まずさに声を掛けただけだった

私の不躾な質問に 彼女は動揺するわけでもなく苦笑しながら

生まれつき声が出なかったの

五体満足で生まれた小さな赤ん坊が
大きく口を開けて泣いているのにも関わらず
分娩室から産声は響かなかったらしい と
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