殺し屋のパラドックス/ただのみきや
らない数字は増え
戦いは熾烈を極めるのだ
だが契約社員のわたしにとって
この戦いを定年退職まで続けられればラッキーだ
そう わたしの職業は会社員
仕事は数字を殺すことだ
そしてわたしの人生も
木々のように年輪を着重ねるものではなく
大根を桂剥きにするようなものなのだ
始めから決められている齢の数を
一年 また一年と 殺し 生きて行く
生きるとは自らの寿命を殺し続けることで
殺し続けて 殺し切って
ついに達成に至るのだ
その報酬は死 やっと
数字殺しの日々から解放されるだろう
《殺し屋のパラドックス:2015年5月30日》
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